10.23.2014

キノコ学習帳その2 近所のキノコ(食用中心)

10月も下旬にさしかかり、ヘルシンキは冬へとまっしぐらに向かっています。
この1か月ほどで、お天気はみるみるうちに変わってしまった感じです。
紅葉・黄葉が過ぎ、霜が降り、小雪が舞い、空は灰色・・・毎年のことではありますが、ちょっと憂鬱な季節ではあります。

これに伴い、周囲に失笑されながらキノコウォッチングに余暇を費やしたシーズンも、終わりに近づこうとしています。

そこで今のうちに、先日の自宅前の食用キノコに続き、近所で見かけた食用その他気になったキノコをまとめておきたいなと思います。

観察地は、地形的には自宅があるのと同じく、集合住宅がいくつか建つヘルシンキ郊外のなだらかな丘の上ですが、建物の敷地内ではなく、街や買い物からの行き帰りに通る公園わきの歩道や芝生、それに続く自宅建物裏の雑木林(散歩道あり)になります。

まずバス停を下りて、買い物帰りに歩く歩道(全長200mくらい?)から・・・
つい数年前までろくに舗装されておらず、天気の悪い日は靴がメチャメチャになる道でした。
道の途中や突き当りには保育園や公園などがあります。


9月下旬、芝生に生えていたササクレヒトヨタケ(Coprinus comatus)
フィンランド語でスオムムステシエニ (Suomumustesieni)
カサの部分が黒く液化して溶けてしまうというキノコですが、
芝生のあるところなら街中でも結構よく見かける、
美味で知られる種類です。

もっとも、キノコの中でも特に重金属を吸収しやすいので、
人や車がたくさん通る場所では採らない方よいとのこと。
(これは、街キノコには共通しているかもしれません・・・)

ここも、車こそ通らないものの、子どもからお年寄り、犬まで
結構行き来の多い歩道沿いの芝生です。
あまりにもあからさまなウォッチングはご近所の手前少々はずかしく、
撮影もちょっと遠目から控えめに・・・


同じ歩道をさらに進み、10月初旬にシラカバの木の下に見つけたスギタケ (Pholiota squarrosa)
フィンランド語でポルホスオムへロッカ (Pörhösuomuhelokka)
フィンランドでは毛糸などの染色に使うキノコの一つです。
昔のガイドブックの中には、若いものなら火を通した後食べてもよいと書いてあることがあるようですが、
現在はあまり推奨されていないようです。
(食用かどうかの分析も日々の研究らしく、キノコガイドブックは10年程度をめどに買い替えた方がよいと
どこかに書いてありました)

香りは結構強いですが、決して不快なにおいではありません。
柄は結構しっかりしていて、野趣あふれるキノコという感じ。
ただ、そうしたこともここでは人目があって確かめられず、後で別所で見つけた時に確認しました・・・




少し日をおいた雨上がり、同じ歩道の並びにある、
別の木の下に生えていたキノコ。
結構大きく成長していて、赤いカサに白いイボで有名な毒キノコに似ていたのですが、柄が太くがっしりしており、倒すと赤く変色したことから
同じ仲間のガンタケ (Amanita rubescens) では?と踏んでいます。
フィンランド語ではルソカルパスシエニ(Rusokärpässieni)
これも食用とする文献がある一方、最近では毒性も認められているようです。
いずれにしても、初心者がむやみに手を出すキノコではないとのこと。
ちなみに、このキノコにも通常イボがあるようですが
雨で容易に流れ落ちるのだそう。


 


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ここで歩道を左に上ると自宅の敷地に入るのですが、もう少し先まで足を伸ばして、
住民の散歩道、建物裏の森の方まで行ってみたいと思います。

お天気はいま一つ・・・

裏の森には毒キノコがいっぱいありました(笑)が、そんな中でも輝きを放っていた
食用キノコを中心にご紹介します。

イロガワリキイロハツ (Russula claroflava) 
フィンランド語でケルタハペロ (Keltahapero)
生食も可能(ただし、黄色いハペロにも何種類かあります)。



次に、ナラタケ属で和名なし (Armillaria borealis)
フィンランド語でメシシエニ (Mesisieni)
切り株などに大量発生するキノコです。


食用にするのは若いもののカサの部分だけ、またよく湯通しする必要があるということですが、
美味とされています。
大量に生えるだけに、大きくなると凄味を増して近づきがたい感じになります(笑)
また、このように切り株に大量に生えるキノコは他にも多数あり、毒キノコも少なくないため
同定に注意が必要かもしれません。

・・・さて、遊歩道を少し深めに入った湿った雑木林の下に!

ちょっと目をひく白いキノコがありました。シロケシメジ (Tricholoma columbetta)?
フィンランド語でシルッキヴァルムスカ (Silkkivalmuska)
シルッキとは「シルク」のことです。ちょっときれいで抜いてしまうのが惜しく、
カサの裏側をきちんと撮らなかったので、今一つ自信がないのですが・・・
太くしっかりした柄、成長してやや茶色をおびたカサの中央部、紫がかったシミなどが
ガイドブックの説明と一致はします。


白いキノコには命に関わる猛毒のものもあるので、慎重に同定する必要があります。
初心者は、まず白いキノコは避けるようにとするガイドブックもあるほどです。
カサがもこもこと広がるように育つキノコも、他に何種類かあるので
ヒダの形状や柄の様子など、どんなにキノコに習熟していようとも
必ずガイドブックと逐一つき合わせる必要があります。
この森にも、明らかに毒キノコという白いキノコが他にありました。

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他にもまだ2、3、食用ではないかと思われるキノコがあったのですが、写真の撮り方やキノコの状態などでどうしても種類の特定ができませんでした。
誤った情報を掲載するとよろしくないと思いますので、また来年に持ち越したいと思います。

また、観察を始めた時期が少し遅かったので、古くなってしまっていて撮影してもあまり美しくないものもいくつか。さらに、写真撮影のポイント(カサの表裏、柄の様子など)や周囲の環境(どんな植生の森か、何の木の下に生えているか)などのチェックもとても重要だということを学びました。。。

来年も豊作だとよいなと思います!

何だか小学生の調べ学習の真似事のようになってしまい、現在進めている仕事とはあまり関係ない話でしたがまた・・・

(といっても、そのうちお客様とももっと時間をかけてキノコ狩りをしたいという希望があるので、あながち仕事とまったく無関係ということはないのです・・・!)